中谷宇吉郎
中谷宇吉郎 · 日本語
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中谷宇吉郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
先生の臨終の席に御別れして、激しい心の動揺に圧されながらも、私はやむをえぬ事情のために、その晩の夜行で帰家の途に就いた。同じ汽車で小宮さんも仙台へ帰られたので、途中色々先生の追想を御伺いする機会を与えられた。三十年の心の友を失われた小宮さんは、ひどく力を落された御様子でボツリボツリと思い出を語られた。常磐線の暗い車窓を眺めながら、静かに語り出される御話を伺っている中に、段々切迫した気持がほぐれて来て、今にも涙が零れそうになって困った。小宮さんが先生の危篤の報に急いで上京される途次、仙台のK教授に御会いになったら、その由を聞かれて大変愕かれて、「本当に惜しい人だ、専門の学界でも勿論大損失だろうが、特に若い連中が張合いを失って力を落すことだろう」といわれたという話が出た。その話を聞いたら急に心の張りが失せて、今まで我慢していた涙が出て来て仕様がなかった。 先生の直接の指導を受けた門下生は誰でも皆、先生の死に遭ってすっかり張合いを失って、何をする元気もなくなってしまったように見える。この事が指導者としての寺田先生の全貌を現わしているのではないかと自分には思われる。どの学問でもそうであろうが、
中谷宇吉郎
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