中谷宇吉郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
卷煙草の吸口のところに、綿のようなもの、即ちフィルターをつけて、煙を濾すことが流行っている。 そういうフィルター附の煙草は、數年前から賣り出されていたが、昨年歸る頃には、まだそう流行していなかった。稀れに吸っている人を見かける程度で、全體の數パーセントにもならなかったであろう。 ところが、今度來てみたら、僅か一年のうちに、たいへんな流行である。研究所の中でも、半數近くは、このフィルター附の煙草を吸っている。私も試みてみたが、口あたりが軟くて、何となくのどにいいような氣がするので、目下つづけてみている。 アメリカのように、消費度が高くて、極端な自由競爭をやっている國では、何か一つ當たると、一遍に大金持になる。煙草の方は、大會社でやっているのであるから、今紀文のようなことはなかろう。しかし會社としては、何か一つ人氣に投ずると、大いに儲かるわけである。 フィルター附の煙草が、何故急にこう普及するようになったかは、一寸分らない。やにを濾せば、のどにいいくらいは、初めから分っていたことである。 ところで、今日パーティーに招ばれて行ったら、同席の夫人が、やはりフィルター附の煙草を吸っている。そして
中谷宇吉郎
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