新美南吉 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
飴だま 新美南吉 春のあたたかい日のこと、わたし舟にふたりの小さな子どもをつれた女の旅人がのりました。 舟が出ようとすると、 「おオい、ちょっとまってくれ。」 と、どての向こうから手をふりながら、さむらいがひとり走ってきて、舟にとびこみました。 舟は出ました。 さむらいは舟のまん中にどっかりすわっていました。ぽかぽかあたたかいので、そのうちにいねむりをはじめました。 黒いひげをはやして、つよそうなさむらいが、こっくりこっくりするので、子どもたちはおかしくて、ふふふと笑いました。 お母さんは口に指をあてて、 「だまっておいで。」 といいました。さむらいがおこってはたいへんだからです。 子どもたちはだまりました。 しばらくするとひとりの子どもが、 「かあちゃん、飴だまちょうだい。」 と手をさしだしました。 すると、もうひとりの子どもも、 「かあちゃん、あたしにも。」 といいました。 お母さんはふところから、紙のふくろをとりだしました。ところが、飴だまはもう一つしかありませんでした。 「あたしにちょうだい。」 「あたしにちょうだい。」 ふたりの子どもは、りょうほうからせがみました。飴だまは一
新美南吉
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