新美南吉 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
お母さんになつた小鳥が木の上の巣の中で卵をあたためてをりました。するとまた今日も牝牛がその下へやつて來ました。 「小鳥さん、今日は。」と牝牛がいひました。 「まだ卵は孵りませんか。」 「まだ孵りません。」と小鳥は答へていひました。 「あなたの赤ちやんはまだですか。」 「だん/\お腹の中で大きくなつてまゐります。もう十日もしたら生れませう。」と牝牛はいひました。 それから小鳥と牝牛はいつものやうにまだ生れてゐない自分たちの赤ん坊のことで、自慢をしあひました。 「牝牛さん、聞いて下さい。私の可愛いい坊や達はね。きつと美しい瑠璃色をしてゐて、薔薇の花みたいによい匂がしますよ。そして鈴をふるやうなよい聲でちる/\と歌ひますよ。」 「私の坊やはね、蹄が二つに割れてゐて、毛色はぶちで尻つぽもちやんとついてゐて、私を呼ぶときは、もう/\つて可愛い聲で呼びますよ。」 「あら可笑しい。」と小鳥は笑ひをおさへていひました。 「もう/\が可愛い聲ですつて。それに尻つぽなんか餘計なものよ。」 「何を仰有るのですか。」と牝牛も負けずにいひました。 「尻つぽが餘計なものなら、嘴なんかも餘計なものよ。」 こんな風に
新美南吉
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