新美南吉 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
久助君の話 新美南吉 久助君は、四年から五年になるとき、学術優等品行方正のほうびをもらってきた。 はじめて久助君がほうびをもらったので、電気会社の集金人であるおとうさんは、ひじょうにいきごんで、それからは、久助君が学校から帰ったらすぐ、一時間勉強することに規則をきめてしまった。 久助君は、この規則を喜ばなかった。一時間たって、家の外に出てみても、近所に友だちが遊んでいないことが多いので、そのたびに、友だちをさがして歩かねばならなかったからである。 秋のからりと晴れた午後のこと、久助君は柱時計が三時半をしめすと、「ああできた」と、算術の教科書をパタッととじ、つくえの前を立ちあがった。 外に出るとまばゆいように明るい。だが、やれやれ、きょうもなかまたちの声は聞こえない。久助君は、お宮の森の方へ耳をすました。 森は、久助君のところから三町ははなれていたが、久助君は、そこに友だちが遊んでいるかどうかを、耳で知ることができるのだった。だが、きょうは、森はしんとしていて、うまい返事をしない。つぎに久助君は、反対の方の、夜学校のあたりにむかって耳をすました。夜学校も三町ばかりへだたっている。だが、こ
新美南吉
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