新渡戸稲造 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
論語にある「己の欲するところに従えども矩を踰えず」の一句こそ実に自由の定義を能く述べて尽したものであると前号に説明し、然らば矩とは何なるかと反問し、これには大略内部と外部との二つに分つことが出来ようと述べた。外部の矩とは外部より来る要求、圧迫、強制等で、風俗習慣も一国の法律もその類であるが、しかしこの意味に於ける外部の矩も自分が心から心服して何の不平もなく甘んじてそれに従い、あるいはもしそういう風俗習慣なり法律なりが存しなかったなら、自分から進んで拵えたいと思うような矩であるならば、一見外部の矩の如くであるが、自己の意志の欲するところに合致する以上は、これを外部の矩とはいい難い。故に立憲国の法律の如きは国民自身が制定するのであるから、己の欲するところであって、その間に内外の区別を設けることは難い位である。 しかし自分が設けた法律でもこれを破れば制裁は外より来る。議会で決した法律の制定に特別委員となって働いた議員ですらも、この法律の規定に反すれば制裁を遁れることは出来ない。警察なりその他外部の力によりて罪せらる。この意味に於ては法律もやはり外部の矩というてよいであろう。習慣もまた同じであ
新渡戸稲造
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