新渡戸稲造 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
右に述べた歴史の長短と聯想されて起る問題は大和民族の立場である。我々が新聞や演説に常に天孫民族ということを聞くは、あたかも排外的米人がアングロ・サクソン民族とかノールディックとかを振りまわすように、耳ざわりとなるほど多いのである。果して大和民族という純粋な民族があったかすら未だ判然せぬ。かく呼び做す如き民族は政治上の目的のために作った一種の仮装談であるならば、その用い所を選ばねばただに効果が少いのみならず、かえって弊害あるを怖る。米人がハンドレッド・ペルセント米人といえるに対し、他邦民は大分反感を抱いている。今こそアングロ・サクソンは景気がよいから、かかる人種が実際に現存していることを信じたいものが沢山あるが、研究の結果、どれほどかくの如き純粋の人種があるか、その道の人は大にこれを疑っている。然るに総て秀でたものはアングロ・サクソンなりと言うに至っては抱腹絶倒の至りである。一体英吉利の国土にアングルス人種がどれほどいたかと尋ねたら、その数たる甚だ少く、また英国に於て有為あるいは有名な人々を列挙して、その中にアングルス人種に属するものが何人あるかといえば、その割合の寥々たるには一層驚かざ
新渡戸稲造
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