萩原朔太郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
魚のやうに空氣をもとめて、 よつぱらつて町をあるいてゐる私の足です、 東京市中の掘割から浮びあがるところの足です、 さびしき足、 さびしき足、 よろよろと道に倒れる人足の足、 それよりももつと甚だしくよごれた絶望の足、 あらゆるものをうしなひ、 あらゆる幸福のまぼろしをたづねて、 東京市中を徘徊するよひどれの足、 よごれはてたる病氣の足、 さびしい人格の足、 ひとりものの異性に飢ゑたる足、 よつぱらつて堀ばたをあるく足、 ああ、こころの中になにをもとめんとて、 かくもみづからをはづかしむる日なるか、 よろよろとしてもたるる電信柱、 はげしきすすりなきをこらへるこころ、 ああ、ながく道路に倒れむとする絶望の足です。 ●図書カード
萩原朔太郎
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