原民喜 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
鎮魂歌 原民喜 美しい言葉や念想が殆ど絶え間なく流れてゆく。深い空の雲のきれ目から湧いて出てこちらに飛込んでゆく。僕はもう何年間眠らなかったのかしら。僕の眼は突張って僕の唇は乾いている。息をするのもひだるいような、このふらふらの空間は、ここもたしかに宇宙のなかなのだろうか。かすかに僕のなかには宇宙に存在するものなら大概ありそうな気がしてくる。だから僕が何年間も眠らないでいることも宇宙に存在するかすかな出来事のような気がする。僕は人間というものをどのように考えているのか、そんなことをあんまり考えているうちに僕はとうとう眠れなくなったようだ。僕の眼は突張って僕の唇は乾いている、息をするのもひだるいような、このふらふらの空間は……。 僕は気をはっきりと持ちたい。僕は僕をはっきりとたしかめたい。僕の胃袋に一粒の米粒もなかったとき、僕の胃袋は透きとおって、青葉の坂路を歩くひょろひょろの僕が見えていた。あのとき僕はあれを人間だとおもった。自分のために生きるな、死んだ人たちの嘆きのためにだけ生きよ、僕は自分に操返し操返し云いきかせた。それは僕の息づかいや涙と同じようになっていた。僕の眼の奥に涙が溜っ
原民喜
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