水上滝太郎
水上滝太郎 · 日本語
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水上滝太郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
岡田夫人から「八千代集」を頂いた。 ひと昔前の事、自分がまだ中學の時代に、如何いふ心持で讀んだのか忘れてしまつたが、小山内薫氏の「夢見草」と、小山内八千代さんの「門の草」といふ文集を、常に机の上に置く十數册の詩歌集と一緒に並べて持つてゐた。ヲサナイと呼ぶ事を知らずにコヤマウチだと思つてゐた。小山内氏兄妹が、泉鏡花先生の作品の愛讀者であり且研究者だといふ事を、ある雜誌で承知して、その爲に買つた二册だつたかと思ふ。本の裝幀が美しかつたのと、若い兄妹が揃つて文筆に親しんでゐるといふ事が、當時の自分には羨しくも懷しくも思はれたのである。當今思ひつき專門の雜誌が、有島兄弟號谷崎兄弟號長田兄弟號を出し、物好きな世間がそれに釣られる心持を、自分は自分自身持つてゐる事を拒め無い。 「夢見草」は今も自分の本箱の中にあるが、「門の草」は何時かしら古本屋にでも賣拂つたのであらう、自分の手もとには無くなつた。 いろ/\の美しい文章が集めてあつたが、それがどんなものだつたか今では全く覺えてゐない。夜寒の門の外で小犬の啼いてゐる景色が、その文集の何處かにあつたやうに思ふがあてにはならない。女の子が集つて、おはじき
水上滝太郎
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