宮本百合子
宮本百合子 · 日本語
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宮本百合子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
初めてあなたのお書きになるものを読んだのは、昔、読売新聞にあなたが「二人の小さいヴァガボンド」という小説を発表なさったときであり、その頃私は女学校の上級生で、きわめて粗雑ながら子供の心理の輪廓などを教わっていた時分のことでした。もうそれからでも、ざっと二十年は経ちます。そして、あの当時にあっては大変ハイカラーで欧州風の教養の匂いの高かった作品の中で、母なる作者の愛情と観察につつまれつつ活躍していた二人のヴァガボンドのうち、一人は言語学者としてイタリーへの交換学生として旅立っており、一人はもう若い物理学者として、この新聞を読むであろう学生の一部の人々を指導しているという今日の有様です。 本年のはじめ、私が特別な非人間的生活を強いられていた間に、漱石全集をよみました。寒い寒い板のような空気の中で、手は懐手が出来るが耳は懐へしまえないから霜やけをかゆがりながら、その日記の部分をみていたら、私にとってまことに興味ある一文に出会いました。 それは、明治四十二年三月二十日の日記です。漱石は「二葉亭露西亜で結核になる。帰国の承諾を得た所経過宜しからず入院の由を聞く。気の毒千万也。大阪朝日十万円で社を
宮本百合子
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