宮本百合子
宮本百合子 · 日本語
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宮本百合子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
幸運の手紙というものは、私自身としては送られたことがない。もし送られたら、多分そのまますててしまうだろうと思うけれども、立ちどころに厄災来る、というようなことが書かれていたら、やっぱりいい心持はしないであろう。あら、いやね、こんなものが来た、というだろうと思う。 幸運の手紙というのは、絶えず地球をまわっていて、時々日本へもめぐって来るというものなのだろうか。それとも日本の内は日本の内だけ廻っているのだろうか。きいて見たがはっきり知っている人もなかった。 人間は誰でも心の底でぼんやり幸福をねがっていると思う。ぼんやりと、自分でもその本態をはっきりつかめずに幸福や安らかさを思っている心を、幸福の手紙が、却って凶悪のはっきりした予告でおどろかして、一つの手紙も書くという行動に動かして行くところは、なかなか心理的である。このことは、皆が、不幸とか災難とかについては、その種類もその数の多さも大抵は知っていて、災難というと立ちどころに、ああと思うめいめいの心当り、危惧さえ日常生活の裡には存在しているという我々の現実を語っている。前線に愛する誰彼を出しているような人にとって、厄災と云う字は笑いすてき
宮本百合子
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