宮本百合子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
(第一信)[自注1]〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 モネー筆「断崖」(一)、コロー「ルコント夫人」(二)の絵はがき)〕 (一)七日、今朝程はお手紙呉々も有難う! ああちゃんが後手にかくして朝のお目ざめに持ってきてくれたのを、忽ち看破したまではよかったけれど、さて手にとってつくづく表紙を眺めて、封をきり、いたずら者のいない間に読もうと思ったらば、字が一つも字の格好にみえないで、すじのいり乱れで、どうみても物にならず、とうとう閉口して読んで貰う決心をつけました。目がひどくて、殆んど焦点がきまらない有様なので、いつか目を悪くした時慶応で貰った点眼薬をまた貰って、この二日程はふすまのワクが真直にみえる様になりました。自分では読めないけれど、読めないと尚手紙がほしい。この暑さをどうやら工夫して無事にしのいでいらっしゃるのは、本当に何よりのお手柄だと思います。どうぞまだこれからが大変だから、益御大切に願います。 (二)今年がそんな特別の暑さと知らず、一生懸命にしのごうと思っている内に、あせもだらけになって、あせもの中から鼻の先だけ出している内、とうとうのびてしまいました。 隆治さんが丈夫

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