宮本百合子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
古典からの新しい泉 宮本百合子 世界が到るところで大きい動きと変化とをみせていて、この状態はおそらく五年や六年でおさまるものとは考えられない。 第一次の欧州大戦ののち世界の文学は非常に変化して、日本も文学の歴史に一つの転換を示した。 今日から明日へかけて私たちの吸う空気のなかに感じられている現代の波立ちは、その間からどんな文学を生み出して行くのだろう。そのことは、つまり私たち自身がこれから先数年の激しい生活のうごきの間に、どんな風に変ったり成長したりするだろうか、ということになるのであると思う。 文学そのものが動揺しているというよりも文学に従事している人々が、文学をどう見てゆくかというめいめいの態度の上での動揺がこの頃大変目立っていて、文学を愛すものの胸に何となしの不安をよびさましていると思う。 いろいろな人がいろいろなことを云って、新体制と云って何か急に特別なものが文学の姿で出現しそうな感じを与えて、これまで文学というものは大体こういうものと思ってそれを愛していた人は、はたと行手にちがった形でも描き出さなければならないような一種途方にくれた気持にもさせられているのではないだろうか。
宮本百合子
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