宮本百合子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
世紀の「分別」 宮本百合子 日本の言葉に、大人気ない、という表現がある。誰の目から見てもあんまり愚劣だと思われることがらや、衆目が、そこに誹謗を見とおすような言動に対して、まともにそれをとりあげたり、理非を正したりすることは、日本の表現では大人気ない態度とされてきた。そういう場合には、あえて問題にしないで、笑ってすぎる態度が知性の聰明をあらわすポーズとされてきた。 この大人気ない、いきりたちを自分に対して嫌い、きまりわるがる日本の知性の習慣は、過去数年間に、日本の知性をよりすこやかに生かすために何の役に立ってきただろう。むしろ、大人気なくあるまいとしたポーズそのもののなかに人間性も人間理性も追いこまれて、それなりに凍結させられ、やがて氷がとけたときとり出された知性は、鮮度を失って、急な温度の変化にあった冷凍物特有の悲しい臭気を放った現実を、大なり小なりわたしたちは経験してはいないだろうか。 日本のファシズムが露骨に言論統制をはじめ、文化抑制を強行し、文学者の存在権は文学上の業績ではなくて軍御用の程度によって保障されるようになって行ったとき、ファシストでない大多数の人々は、もちろんその軍

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