宮本百合子 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
私たちの日々の生活というものは、極めて現実なものであって、どんなひとでも、その人々の生きている時代とその人の生活の属している社会環境とから離れて生活を持つということはない。どんなに目立たない朝夕をつつましく送っているひとの一生をとってみても、その人の存在は先ず地球の上に現われている一個の人間であるということからはじまって永い人類進化の歴史につながっている。更にその人が人間であるというだけではなくて、人間であるからには必ず地球上に今日それぞれの特徴をもって存在している国というものに結びついて生活しているのであるし、その意味では広い人類の世界歴史のそれぞれの一部を構成している国の歴史がめぐりあってゆく運命と決して切りはなされることが出来ない。その国の歴史の動きというものはまた実に複雑な性質をもっていて、決して手品師の一本の棒の上でまわっている一枚の皿のようなものではなく、種々様々の国内の社会構成の力の消長によって推移する。その複雑ないくつもの社会的な力の摩擦融合の根源は、世界史の一部分として生きているその国が、自身の存在のために日夜行っている自転と、自転しつつ二六時中国際的諸関係と接触して

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