Vol. 2May 2026

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小栗判官論の計画 「餓鬼阿弥蘇生譚」終篇

折口信夫

神道集の諏訪本地。 信濃念仏。 安曇の蹶抜き伝説。 文字から読んだ時代。 泉小太郎――白水郎。 海中と、山中の深穴と。 おほくにぬし・すさのを・すせり媛の比良坂。 数種の比礼と、四季の国々と。 禊ぎと、黄泉と。 いざなぎと、甲賀三郎と。 伊吹山と、地獄谷伝説と。 甲賀人の宗教。 湖水を中心とした宗教。 禊ぎと、ゆかはと。 出雲国造の湯と、大汝と。 いざなぎ・

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小栗外伝 (餓鬼阿弥蘇生譚の二)魂と姿との関係

折口信夫

一 餓鬼身を解脱すること 餓鬼阿弥蘇生を説くには、前章「餓鬼阿弥蘇生譚」に述べたゞけでは、尚手順が濃やかでない。今一応、三つの点から見て置きたいと考へる。第一、蛇子型の民譚としての見方。第二、魂と肉身との交渉、並びにかげのわづらひの件。第三に、乞丐と病気との聯絡。此だけは是非して置かねば、通らぬ議論になる。 べありんぐるどの「印度欧洲種族民譚様式」の第九番目

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小さい機縁

中谷宇吉郎

今年の六月、本土爆撃がいよいよ苛烈になって、東京は大半焼け、横浜も一日の猛爆で、全市が一遍に壊滅してしまった頃の話である。 鎌倉で或る機会に里見氏を訪ねた時に、狩太にある有島農場の話が出た。あの農場はもとは里見さんの令兄故有島武郎氏の農場であった。有島さんはその頃抱懐されていた主義に基いて、あの農場を当時の小作人たちに無償で開放された由である。その開放の方法

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小フリイデマン氏

マンパウル・トーマス

とがは乳母にあった。――最初あやしいと思った時、フリイデマン領事夫人は、そんな悪徳はおさえつけてしまえと、本気になって彼女にいい聞かせたのだが、それがなんの役に立ったろう。今度は滋養になるビイルのほかに、なお赤葡萄酒を毎日一杯ずつ飲ませたのだけれど、それもなんの役に立ったろう。この女があさましくもその上、アルコオル・ランプに使うはずのアルコオルまで、平気で飲

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小泉八雲の家庭生活 室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ

萩原朔太郎

万葉集にある浦島の長歌を愛誦し、日夜低吟しながら逍遥していたという小泉八雲は、まさしく彼自身が浦島の子であった。希臘イオニア列島の一つである地中海の一孤島に生れ、愛蘭土で育ち、仏蘭西に遊び米国に渡って職を求め、西印度に巡遊し、ついに極東の日本に漂泊して、その数奇な一生を終ったヘルンは、魂のイデーする桃源郷の夢を求めて、世界を当なくさまよい歩いたボヘミアンであ

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小泉八雲に就てのノート

佐藤春夫

小泉八雲全集を読んで一番感心することは、この詩人が同時にえらい批評家だといふ一事である。正岡子規が一面に於て大批評家を兼ねてゐたのと好一対である。この事は一見意外のやうでもあるけれども、別に不思議ではない。何者であらうとも一家をなす程の人には一家の識見は厳として具はつてゐるものである。それだけの識見を持てないやうな人は、たとひ多少才能があつたにしても才能は仕

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小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」

寺田寅彦

小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」 寺田寅彦 十余年前に小泉八雲の小品集「心」を読んだことがある。その中で今日までいちばん深い印象の残っているのはこの書の付録として巻末に加えられた「三つの民謡」のうちの「小栗判官のバラード」であった。日本人の中の特殊な一群の民族によっていつからとも知れず謡い伝えられたこの物語には、それ自身にすでにどことなくエキゾティックな雰囲気が

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小波瀾

チェーホフアントン

ニコライ・イーリイッチ・ベリヤーエフというのはペテルブルグの家作持ちで、競馬気違いで、そして栄養のいいてらてらした顔の、年の頃三十二ぐらいの若紳士であった。その彼がある晩のこと、オリガ・イワーノヴナ・イルニナ夫人に逢いに行った。この女は彼と同棲していた、或いは彼自身の表現を借りれば、彼は彼女と退屈な長ったらしいロマンスをひきずっていたのであった。実際、このロ

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小浅間

寺田寅彦

小浅間 寺田寅彦 峰の茶屋から第一の鳥居をくぐってしばらくこんもりした落葉樹林のトンネルを登って行くと、やがて急に樹木がなくなって、天地が明るくなる。そうして右をふり仰ぐと突兀たる小浅間の熔岩塊が今にも頭上にくずれ落ちそうな絶壁をなしてそびえ立っている。その岩塊の頭を包むヴェールのように灰砂の斜面がなめらかにすそを引いてその上に細かく刺繍をおいたように、オン

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小照

太宰治

いつも自分のところへ遊びに來てゐる人が、自分の知らぬまに、自分を批評してゐるやうな小論文を書いてゐるのを、偶然に雜誌あるひは新聞で見つけた時には、實に、案外な氣がするものである。その論の、當、不當にかかはらず、なんだか水臭い、裏切りに似たものをさへ感ずるのは、私だけであらうか。こんど改造社から、井伏さんの作品集が出版せられるさうだが、それに就いて何か書け、と

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翻訳済み対訳

小熊秀雄全集-01 短歌集

小熊秀雄

けだものの子 産科院よるのさびしさ夕食の鈴のしづかに鳴りにけるかな おぎや……たかくさびしく産科院けだものの子のうまれけるかな けだものの子はかたくもろ手を胸にくみしつかりなにかにぎり居るかも うすら毛のけだものの子は四つ足をふんばりにつつ呼吸づきにけり けだものの子は昼としなればひそまりて小鼻かすかにうごめけるかも おそるおそるけだものの子の心

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小熊秀雄全集-02 詩集(1)初期詩篇

小熊秀雄

地軸に近い何所かで うづもれた 世にも稀なる紫ダイヤを とげ/\と骨ばかりのやせこけた 悪魔たちがまるくとりまき ひからびた手を繋ぎ合ひ にやにやとした もの倦い足どりで 踊るたびにからからと音がする ◇ ちやうどそれのやうに ちやうどそれのやうに かつて失はれた俺の魂は かつてうばはれた俺の魂は 柔かく 滑らかな琥珀の頬と 熟したザクロの唇とをもつた 美し

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小熊秀雄全集-04 詩集(3)小熊秀雄詩集1

小熊秀雄

たぐひなく美しい幻に満ちた東洋の国日本の過去は、私の祖国として愛着措かないものである。 そして同時に美くしかるべき私の国に、私といふ悪魔の相貌をもつた子が生れたといふことに就いて、私は何者かに充分責められていゝ。 今茲に私の異態の知れない思想を一冊の詩集にまとめて世におくるといふことは、喜んで良いことであらうか、悲しんで良いことであらうか、私自身わからない。

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小熊秀雄全集-05 詩集(4)小熊秀雄詩集2

小熊秀雄

茫漠たるもの 茫漠たる不安のために 私は必死となる 野であり、山であり、村落であり、海であり、 都会であり、村であり、空中であり、 地下道である。 すべての上に住み、 すべての中に住む、 そして何処にも不安がある、 そしてその不安を私の力で埋めようとする、 私はそれが出来るか、 私は知らない、 簡単明瞭な私の答へよ、万歳、 いま私は仕事の最中 突然衝動的に一

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小熊秀雄全集-06 詩集(5)飛ぶ橇

小熊秀雄

●目次 序|綱渡りの現実|移民通信|プラムパゴ中隊|空の脱走者|死界から| 百姓雑兵|飛ぶ橇――アイヌ民族の為めに 僕が詩の仕事の上で、抒情詩の製作に許り、執着してゐないで、長い形式の叙事詩をも手掛け今後もそれを続けてゆかうとする気持には、色々の理由があります。 その一つの理由に挙げられることは叙事詩は、短かい詩とはまたちがつた持味があつて、将来大衆の

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小熊秀雄全集-07 詩集(6)長篇詩集

小熊秀雄

詩集(6)長篇詩集 小熊秀雄 [表記について] ●ルビは「(ルビ)」の形式で処理した。 ●二倍の踊り字(くの字形の繰り返し記号)は「/\」「/゛\」で代用した。 ●JIS外字は「※」で代用し、末尾にグラフィックを置いて字形を示した。 ●は、入力者注を示す。 ●目次 紙幣 シャリアピン 長長秋夜 魔女 きのふは嵐けふは晴天(抒情詩劇) 託児所をつくれ 諷刺大学

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小熊秀雄全集-08 詩集(7)恋愛詩篇

小熊秀雄

詩集(7)恋愛詩篇 小熊秀雄 [表記について] ●ルビは「(ルビ)」の形式で処理した。 ●は、入力者注を示す。 ●目次 最初の微笑と最初の手|谷の上|美しい血を何処に流さう|愛と閑暇|愛の一刀両断|女の強さを愛してゐる|愛は潜水艇のやうに|秋の詩|労働の中の愛|愛の出稼人|あなたの寂寥に答へて|林の中で|夕星の歌|両性の上の貪慾者|愛に休息があるか ――或る

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小熊秀雄全集-09 詩集(8)流民詩集1

小熊秀雄

二十年も、そのもつと前に、自分は詩を書き初めたとき、こんな念願をたてたものであつた、それは一生の間に自分の身長だけの高さの、詩集の冊数をもちたいものだといふことであつた。またその頃は、若く生命の燃焼ともいふべきものが旺盛であつたから、眼にふれるもの、心にふれるもの、みんな詩になりさうで、身長位の高さに詩集がもてさうな気もしたのである。 ところで現在その慾望は

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小熊秀雄全集-10 詩集(9)流民詩集2

小熊秀雄

月は地上を見てゐる 月よ悪い犬奴 お前は光りで咆えよ 地上の喰べ物を欲しがつてゐる でもお前には地上の愛は喰はせない 水蜜桃の汁は おれたちが吸ふのだ 月よ お前は地上の一切の出来事を なにもかにも 光りのセロファン紙で 包まうとする 貧乏も、失恋も、饑餓も たたかひも すべてを美化しようとする お前はだまつて 人間のすることを見てゐたらいゝ 勝負なしの土

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小熊秀雄全集-11 詩集(10)風物詩篇

小熊秀雄

東京駅 東京駅は ウハバミの 燃える舌で 市民の 生活を呑吐する 玄関口、 朝は遅刻を怖れて 階段を一足とび 夕は 疲れて生気なく 沈黙の省電に乗る 所詮、悪蛇の毒気に触れて 人々の 痲痺は 不感症なり。 隅田河 隅田河 河上より水は 河下に流るゝなり 天の摂理に従へば 古き水は 新しき水に 押しながされて 海に入るなり 一銭蒸気五銭となり つひに争議も起る

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小熊秀雄全集-12 詩集(11)文壇諷刺詩篇

小熊秀雄

詩集(11)文壇諷刺詩篇 小熊秀雄 [表記について] ●ルビは「(ルビ)」の形式で処理した。 ●二倍の踊り字(くの字形の繰り返し記号)は「/\」「/゛\」で代用した。 ●は、入力者注を示す。 ●目次 序|志賀直哉へ|佐藤春夫へ|島崎藤村へ|室生犀星へ|正宗白鳥へ|林芙美子へ|横光利一へ|谷崎潤一郎へ|新居格へ|徳永直へ|林房雄へ|武田麟太郎へ|秋田雨雀へ|窪

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小熊秀雄全集-13 詩集(12)その他の詩篇

小熊秀雄

●目次 ◆未収録詩篇(1936~1940) 性別の谷 一つの太陽と二つの現実 パドマ 雪の伝説を探るには 右手と左手 或る旦那の生活 寓話的な詩二篇 温和しい強盗 猿と臭い栗 国民の臍を代表して さあ・練習始め 芝居は順序よくいつてゐる 日比谷附近 多少の埃は 平民と愛 愛と衝動と叡智 文学の大根役者に与ふ 転落 インテリの硬直 喜怒哀楽の歌 怖ろしい言葉を

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小熊秀雄全集-20 大波小波

小熊秀雄

大波小波 小熊秀雄 独立美術分裂説 次は誰が脱退するか ▼独立の林重義も遂にシビレを切らして脱退した。当然の現象である。今年の独立美術展に就ては、一般観賞者はいよ/\この団体のマンネリズムに失望した。出品画家もそれを認めてゐた筈だ、たゞこの団体の一部の会員は『さう飛躍的に進歩ができる筈がない、幾分ではあるが前回より、素質が向上してゐる――』といふ、この言葉位

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