Vol. 2May 2026

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14,981종 중 13,824종 표시

銭形平次捕物控 146 秤座政談

野村胡堂

金座、銀座、銭座、朱座と並んで、江戸幕府の大事な機構の一つに、秤座というのがありました。天正の頃、守随兵三郎なる者甲府から江戸に入って、関東八州の権衡を掌り、のち徳川家康の御朱印を頂いて東日本三十三ヶ国の秤の管理専売を一手に掌握し、西日本三十三ヶ国の秤の司なる京都の神善四郎と並んで、互に侵すことなく六十余州の権衡を管轄しました。 万治三年京の神善四郎、江戸の

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銭形平次捕物控 146 秤座政談

野村胡堂

金座、銀座、錢座、朱座と並んで、江戸幕府の大事な機構の一つに、秤座といふのがありました。天正の頃、守隨兵三郎なる者甲府から江戸に入つて、關東八州の權衡を掌り、後徳川家康の御朱印を頂いて東日本三十三ヶ國の秤の管理專賣を一手に掌握し、西日本三十三ヶ國の秤の司なる京都の神善四郎と並んで、互に犯すことなく六十餘州の權衡を管轄しました。 萬治三年京の神善四郎、江戸の守

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銭形平次捕物控 147 縞の財布

野村胡堂

「親分、元飯田町の騒ぎを御存じですかえ」 「なんだい、元飯田町に何があったんだ」 ガラッ八の八五郎がヌッと入ると、見通しの縁側に踞んで、朝の煙草にしている平次は、気のない顔を振り向けるのでした。 江戸中に諜報の網を張っている順風耳の八五郎は、毎日下っ引が持ってくる夥しい事件の中から、モノになりそうなのを一応調べて親分の銭形平次に報告するのです。 「なアに、つ

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銭形平次捕物控 147 縞の財布

野村胡堂

「親分、元飯田町の騷ぎを御存じですかえ」 「何んだい、元飯田町に何があつたんだ」 ガラツ八の八五郎がヌツと入ると、見通しの縁側に踞んで、朝の煙草にして居る平次は、氣の無い顏を振り向けるのでした。 江戸中に諜報の網を張つて居る順風耳の八五郎は、毎日下つ引が持つて來る夥しい事件の中から、モノになりさうなのを一應調べて親分の錢形平次に報告するのです。 「なアに、つ

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銭形平次捕物控 148 彦徳の面

野村胡堂

「親分、変なことがあるんだが――」 ガラッ八の八五郎は、大きな鼻の穴をひろげて、日本一のキナ臭い顔を親分の前へ持って来たのでした。 「横町の瞽女が嫁に行く話なら知ってるぜ。相手は知らないが、八五郎でないことは確かだ。今さら文句を言ったって手遅れだよ八。諦めるがいい」 銭形平次は無精髯を抜きながら、ケロリとしてこんなことを言うのです。お盆過ぎのある日、御用がす

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銭形平次捕物控 148 彦徳の面

野村胡堂

「親分、變なことがあるんだが――」 ガラツ八の八五郎は、大きな鼻の穴をひろげて、日本一のキナ臭い顏を親分の前へ持つて來たのでした。 「横町の瞽女が嫁に行く話なら知つてるぜ。相手は知らないが、八五郎でないことは確かだ。今更文句を言つたつて手遲れだよ八。諦めるが宜い」 錢形平次は無精髯を拔き乍ら、ケロリとして斯んなことを言ふのです。お盆過ぎのある日、御用がすつか

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銭形平次捕物控 149 遺言状

野村胡堂

柳原の土手下、丁度御郡代屋敷前の滅法淋しい處に生首が一つ轉がつて居りました。 朝市へ行く八百屋さんが見つけて大騷ぎになり、係り合ひの町役人や、彌次馬まで加はつて搜した揚句、間もなく首のない死骸が水際の藪の中から見つかり、それが見知り人があつて、豊島町一丁目で公儀御用の紙問屋越前屋の大番頭清六と判つたのは、大分陽が高くなつてからでした。 ガラツ八の八五郎の大袈

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銭形平次捕物控 149 遺言状

野村胡堂

柳原の土手下、ちょうど御郡代屋敷前の滅法淋しいところに生首が一つ転がっておりました。 朝市へ行く八百屋さんが見つけて大騒ぎになり、係り合いの町役人や、野次馬まで加わって捜した揚句、間もなく首のない死骸が水際の藪の中から見つかり、それが見知り人があって、豊島町一丁目で公儀御用の紙問屋越前屋の大番頭清六と判ったのは、だいぶ陽が高くなってからでした。 ガラッ八の八

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銭形平次捕物控 150 槍の折れ

野村胡堂

「八、何處の歸りだ。朝つぱらから、大層遠走りした樣子ぢやないか」 錢形の平次は斯んな調子でガラツ八の八五郎を迎へました。 「わかりますかえ親分、向柳原の叔母の家から來たのぢやないつてことが」 八五郎の鼻はキナ臭く蠢めきます。 「まだ巳刻前だよ、良い兄さんが髷節に埃りを附けて歩く時刻ぢやないよ。それに氣組が大變ぢやないか。叔母さんとこの味噌汁や煮豆ぢや、そんな

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銭形平次捕物控 150 槍の折れ

野村胡堂

「八、どこの帰りだ。朝っぱらから、たいそう遠走りした様子じゃないか」 銭形の平次はこんな調子でガラッ八の八五郎を迎えました。 「わかりますかえ親分、向柳原の叔母の家から来たのじゃないってことが」 八五郎の鼻はキナ臭く蠢きます。 「まだ巳刻(十時)前だよ、良い兄さんが髷節に埃を付けて歩く時刻じゃないよ。それに気組みが大変じゃないか。叔母さんとこの味噌汁や煮豆じ

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銭形平次捕物控 151 お銀お玉

野村胡堂

「親分、變な事があるんだが――」 ガラツ八の八五郎が、鼻をヒクヒクさせ乍ら來たのは、後の月が過ぎて、江戸も冬仕度に忙しいある朝のことでした。 「手紙が來たんだらう、恐ろしい金釘流で、――兩國の蟹澤のお銀が死んだのは唯事ぢやねえ。葬ひの濟まぬうち、檢屍を頼む――と斯う書いてある筈だ」 錢形の平次は粉煙草をせゝり乍ら、少し節をつけて言ふのでした。 「親分は、どう

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銭形平次捕物控 152 棟梁の娘

野村胡堂

深川熊井町の廻船問屋板倉屋万兵衛、土蔵の修復が出来上がったお祝い心に、出入りの棟梁佐太郎を呼んで、薄寒い後の月を眺めながら、大川を見晴らした、二階座敷で呑んでおりました。 酌は醗酵し過ぎたような大年増、万兵衛の妾でお常という、昔はずいぶん美しくもあったでしょうが、朝寝と美食と、不精と無神経のために、見事に脂肪が蓄積して、身体中のあらゆる関節に笑靨の寄るといっ

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銭形平次捕物控 152 棟梁の娘

野村胡堂

深川熊井町の廻船問屋板倉屋萬兵衞、土藏の修覆が出來上がつたお祝ひ心に、出入りの棟梁佐太郎を呼んで、薄寒い後の月を眺めながら、大川を見晴らした、二階座敷で呑んでをりました。 酌は醗酵し過ぎたやうな大年増、萬兵衞の妾でお常といふ、昔は隨分美しくもあつたでせうが、朝寢と美食と、不精と無神經のために、見事に脂肪が蓄積して、身體中のあらゆる關節に笑靨の寄るといつた、大

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銭形平次捕物控 153 荒神箒

野村胡堂

「錢形平次親分といふのはお前樣かね」 中年輩の駄馬に布子を着せたやうな百姓男が、平次の家の門口にノツソリと立ちました。 老けてゐるのはその澁紙色に焦けた皮膚のせゐで、實は三十五六をあまり越してゐないかもわかりません。油氣のない髮を藁しべで結つて、月代は伸び放題、從つて熊の子のやうな凄まじい髯面ですが、微笑すると眼尻に皺が寄つて、飛んだ可愛らしい人相になります

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銭形平次捕物控 154 凧の詭計

野村胡堂

「親分、旅をしませんか、良い陽氣ですぜ」 ガラツ八の八五郎はまた斯んな途方もないことを持込んで來たのです。梅の花はもう梢に黄色くなつてゐるのに、今年の二月は妙に薄寒くて、その日も行火の欲しいやうな曇つた日でした。 「旅? 又なんか嗅ぎ出したんだらう。物見遊山には早いし、後生氣や金儲けで草鞋をはく柄ぢやなし」 錢形平次は煙管を投り出して、天文を案ずる型になるの

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銭形平次捕物控 155 仏像の膝

野村胡堂

「親分、怖い話があるんだが――」 ガラツ八の八五郎が、息を切らして飛込みました。櫻の莟もふくらんだ、ある麗かな春の日の晝少し前のこと――。 「脅かすなよ。いきなり、飛込んで來やがつて」 錢形平次は鎌首をもたげました。相變らず日向に不景氣な植木鉢を竝べて、物の芽をなつかしんでゐたのです。 「鐵砲ですぜ、親分」 八五郎は餘つ程急いで來たらしく、まだ筋を立てては物

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銭形平次捕物控 156 八千両異変

野村胡堂

「親分」 ガラツ八の八五郎が、泳ぐやうに飛込んで來たのは、江戸中の櫻が一ぺんに咲き揃つたやうな、生暖かくも麗らかな或日の朝のことでした。 「なんだ八、大層あわててゐるぢやないか」 錢形平次は朝飯の箸を置くと、大して驚く樣子もなく、煙管を取上げて、粉煙草をせゝります。 「落ついて居ちやいけませんよ。釜屋で又殺しがあつたんで」 「釜屋?」 「北新堀の釜屋、――ツ

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銭形平次捕物控 157 娘の役目

野村胡堂

「八、何んか良い事があるのかい、大層嬉しさうぢやないか」 「へツ、それほどでもありませんよ親分、今朝はほんの少しばかり寢起がいゝだけで――」 ガラツ八と異名で呼ばれる八五郎は、さういひ乍らも湧き上がつて來る滿悦を噛み殺すやうに、ニヤリニヤリと長んがい頤を撫で廻すのでした。 相手になつてゐるのは、江戸開府以來の捕物の名人と言はれた錢形の平次、まだ三十そこ/\の

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銭形平次捕物控 158 風呂場の秘密

野村胡堂

その頃の不忍の池は、月雪花の名所で、江戸の一角の別天地として知られました。池の端に軒を連ねた出逢茶屋は戯作、川柳にその繁昌を傳へる江戸人の情痴の舞臺ですが、池のほとりを少し西へ取つて茅町一丁目、二丁目へかけては一流の大町人、大藩の留守居など、金を石つころほどにも思はぬ人達の寮や妾宅など、不氣味な靜けさと、目に餘る贅澤さで、町家に立ちまじつて五軒十軒と數へられ

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銭形平次捕物控 159 お此お糸

野村胡堂

「さあ大變だ、親分」 ガラツ八の八五郎は、髷先で春風を掻きわけるやうにすつ飛んで來ました。よく晴れた二月のある朝、何處からともなく聞える小鳥の囀りや、ほんのりと漂ふ梅の花の匂ひをなつかしむともなく、江戸開府以來と言はれた捕物の名人錢形の平次は、縁側に立つて斯うぼんやり眺めてゐたのです。 「相變らず騷々しい奴ぢやないか、何が一體大變なんだ」 「大變も大變、今日

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銭形平次捕物控 160 二つの刺青

野村胡堂

「親分、大變な者が來ましたよ」 子分の八五郎、ガラツ八といふ綽名の方がよく通るあわて者ですが、これでも十手捕繩を預かる、下つ端の御用聞には違ひありません。 「何んだ? 今更借金取なんかに驚く柄ぢやあるめえ。ズイと通しな」 江戸開府以來と言はれた捕物の名人錢形の平次は、それでもとぐろをほどいて居住ひだけは直しました。まだ三十代に入つたばかり、燻したやうな澁い人

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銭形平次捕物控 161 酒屋忠僕

野村胡堂

「親分、平右衞門町の忠義酒屋といふのを御存じですかえ」 「名前は聞いて居るが、店は知らないよ」 ガラツ八の八五郎は何んかまた事件を嗅ぎ出して來た樣子です。大きな小鼻をふくらませて、懷ろから出した掌で、長んがい顎を撫で廻し乍ら、斯んな調子で始めるのでした。 薄寒い日射しが障子に這ひ上がつて、街にはもう暮近い賑やかさが脉打つてゐやうといふ或日の出來事です。 「孝

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銭形平次捕物控 162 娘と二千両

野村胡堂

「わツ驚いた、ドブ板が陷穴になつて居るぜ。踏み返したとたんに赤犬が噛み付きさうに吠える仕掛は念入り過ぎやしませんか、親分」 ガラツ八の八五郎は危ふく格子戸につかまつて、件の噛み付くやうな赤犬を追ひ乍ら、四方構はぬ聲をあげるのでした。 「靜かにしろ、そいつは皆んな借金取除けの禁呪なんだ、――今日を何時だと思ふ」 捕物の名人錢形の平次は、六疊縁側近く寢轉がつたま

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銭形平次捕物控 163 閉された庭

野村胡堂

江戸開府以來の捕物の名人と言はれた錢形の平次は、春の陽が一杯に這ひ寄る貧しい六疊に寢そべつたまゝ、紛煙草をせゝつて遠音の鶯に耳をすまして居りました。 此上もなく天下泰平の姿ですが激しい活動のあひ間/\に、こんな閑寂な境地を樂しむのが、平次の流儀でもあつたのです。 「八、何をして居るんだ。用事があるなら大玄關から入れ」 いきなり平次は振り返りもせずに、後ろの方

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