江戸川乱歩 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
日東サルベージ会社の沈没船引きあげのしごとが、房総半島の東がわにある大戸村の沖あいでおこなわれていました。 その海の底に、東洋汽船会社の千五百トンの貨物船「あしびき丸」が沈没しているのです。ひと月ほどまえのあらしの晩に、「あしびき丸」は航路をまちがえて、海の中の大きな岩にぶつかり、船の底がやぶれて、そこへしずんだのです。 この沈没船の引きあげをたのまれたサルベージ会社の作業船は、「あしびき丸」のしずんでいる海面に行って、どんなふうにして引きあげたらよいかをしらべるために、まず、ふたりの潜水夫を海の底へおろしました。 あついゴム製の服をきて、まるい鉄のかぶとをかぶり、おもい鉛のついたくつをはいて、ふたりの潜水夫は、作業船の外がわについた鉄ばしごを、つたいおり、ブクブクとあわをたてて、青い海の中へ、はいっていきました。空気を送るくだと、いのち綱が、グングンのびていきます。 そこは、海の中の岩山のようなところで、大きな岩がもりあがっていて、底はあんがい浅いのです。水面から三十メートルぐらいで、もう海の底へついてしまいます。 三十メートルもおりると、海の中は夕やみのように暗いので、潜水夫はつよ

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