片岡義男 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
三十分ほどまえに、ぼくは目を覚ましベッドを出た。ついさっき、シャワーを浴びた。うなじのあたりが、まだ濡れている。いまは朝だ。 朝食を作るために、ぼくはキチンに入ってきた。キチンの窓のまえに、ぼくは立っていた。窓の外にある景色を、ぼくは見ていた。「ホノルルの景色として、最高の景色のひとつが、この家ではキチンの窓からでも見ることができるのですよ」ぼくがこの家を借りるとき、不動産エージェントは、そう言っていた。 最高であるかどうかは、いまは問わないとして、いい景色であることは確かだ。ホノルルの市街地とそのむこうに大きく横たわっている太平洋、そしてその上の空とを、この窓から一望することが可能だ。家は、高台に建っていた。ホノルルが海と接するあたりから見ると、このへんは相当な高度だ。窓から見える広い景色に対して、この高度は、バランスがちょうどいい。景色が具象を離れて抽象となっていく、そのちょうどはじまりのあたりに、この家は位置していた。 ここへ来るまえは、ぼくはサンフランシスコにいた。そして、サンフランシスコのまえは、ニューヨークだった。ニューヨークからサンフランシスコへ来ると、あらゆることのペー

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