木暮理太郎
木暮理太郎 · 日本語
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木暮理太郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
荒模様であった空は、夜が明けると少し穏になって、風は強いが雨脚は疎になった。七月二十四日の朝である。松本駅前の旅館に泊っていた槇君と私とは、駅に向って馳せ集る夥しい人の群に、それは秩父宮殿下が今朝此処へ御着きになって、やがて信濃鉄道へ御乗換になる其折の、奉迎奉送の人達であると知りながら、又昨日中房温泉から殿下のお迎に下って来た私等でありながら、忘れてはふと何事が起ったのかと怪しむのであった。 汽車は定刻の午前七時二十分より可なり遅れて到着した。信濃鉄道では有明駅まで特に臨時列車を運転することになっているので、別に長いこと御待合せの必要もなく、殿下はプラットホームにお立ちになった儘、伺候の人々に謁見を賜わり、お荷物の積入れが済むと直ぐ御乗込みになって、列車は有明駅に向って出発した。 殿下は御質素な登山服に登山靴というお身軽な御扮装で、御附武官の竹本さんも御用掛の渡辺さんも同じく登山の服装であった、槇君は元より言う迄もない。唯県庁からお伴の列に加わる矢沢君其他の人達や各新聞社の特派員の大部分は、私と同じ草鞋仲間なので、少しは心強くなる。 有明駅に着く頃から、山は雨に烟っているが、里では雲が
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