相馬御風 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
この二三日真黒なシマキ雲が時々海の方から吹き上げられて来て、すさまじい突風と共に霰となつて私達を脅かす。一しきりそれが過ぎ去ると、頭の上の空の一ところがケロリと晴れた青空と日の光を見せるのであるが、すぐに又真黒な雲が吹き上げられて来る。いよ/\冬がやつて来たのだ。 僅の晴間に二階の窓から山の方を見ると、すぐそこまでもう真白になつてゐる。山奥の村々はとうにもう雪に見舞はれてゐることであらう。 私の庭では淡紅色の山茶花がいつの間にか散つてしまつて、花片が濡れた地面に泥まみれになつてあちこちに散らばつてゐる。玄関脇の八ツ手の花も苞をぬいでゐる。小池の金魚も鯉も深いところにちゞこまつてゐると見えて姿を見せない。 庭一めんに散らばつた柘榴や、萩や、楓の黄葉の上に、ハラ/\と音を立てゝ霰の降る風情はさびしいうちにも何となくなつかしみがある。寒くなつて来ると、隣人達との挨拶も急に親しみを増したやうに感じられる。 自然のかうしたさびしい光景の中に、私達の町ではこゝの駅を起点としていつかは表日本へ通ずる予定の鉄道がいよ/\一部開通することになり、その歓びにわき返つてゐる。 南の空には白馬ヶ岳をはじめとし
相馬御風
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