野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
両国に小屋を掛けて、江戸開府以来最初の軽業というものを見せた振袖源太、前髪立ちの素晴らしい美貌と、水際立った鮮やかな芸当に、すっかり江戸っ子の人気を掴んでしまいました。 あまりの評判に釣られるともなく、半日の春を小屋の中の空気に浸った、捕物の名人で「銭形」と異名を取った御用聞の平次、夕景から界隈の小料理屋で一杯引っかけて、両国橋の上にかかったのはもう宵の口。 小唄か何か口吟みながら、十六夜の月明りにすかして、何の気もなくヒョイと見ると、十間ばかり先に、欄干へ片足を掛けて、川へ飛込もうとしている人間があります。 「あッ」 と言ったが、駆け付けるには少し遠く、大きな声を出せば、すぐ飛込まれるに決っております。 思わず袖へ手が入ると、今しがた剰銭にとった永楽銭が一枚、右手の食指と拇指の間に立てて、ろくに狙いも定めずピュウと投げると、手練は恐ろしいもので、身を投げようとする男の横鬢をハッと打ちます。 「あッ、何をするんだ」 思わず飛込みそうにした欄干の足を引っ込めて、側へ飛んで来た平次に、噛みつきそうな顔を見せます。 「お、危ねえ、俺は河童の真似は得手じゃねえから、飛込まれたら最後見殺しにしな
野村胡堂
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