野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
芝三島町の学寮の角で、土地の遊び人疾風の綱吉というのが殺されました。桜に早い三月の初め、死体は朝日に曝されて、道端の下水の中に転げ込んでいたのを、町内の人達が見付けて大騒ぎになったのでした。 傷というのは、伊達の素袷の背後から、牛の角突きに一箇所だけ、左の貝殻骨の下のあたり、狙ったように心臓へかけてやられたのですから、大の男でも一たまりもなかったでしょう。刺された拍子に転げ込んだものと見えて、下水の中は蘇芳を流したようになっております。 この辺の縄張は、柴井町の友次郎という御用聞、二足の草鞋を履いているという悪評もありますが、まず顔の通った四十男。早速駆けつけて、役人の検屍の前に、一と通り、急所急所に目を通しました。 「親分、ひどい事になったものですね」 「お、八五郎か。銭形の仕込みでたいそう鼻が良いな」 「からかっちゃいけません。まだこの死体を見付けてから、半刻(一時間)と経たないって言うじゃありませんか。いくら鼻がよくたって、神田から駆けつける暇なんかありゃしません」 「じゃ品川の帰りって寸法かい」 友次郎はどこまでからかい面だかわかりません。 「とんでもない、川崎の大師様へ日帰り
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