野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、幽霊を見たことがありますかい」 「そんなものに近付きはねえよ。もっとも化物なら、この節は箱根の向うとは限らねえ、その辺にも大きな鼻の孔を掘っているぜ――」 「ちぇッ、親分の前だが、これでも町内の新造は大騒ぎだ。三日でもいいから、八さんと一緒になって苦労がしてみたいってネ」 「新造じゃあるめえ。そいつは、横町に居る手前のお袋だろう。この間もそう言っていたよ――いつまでも親分のところに厄介になっているでもあるまいから、なんとか一軒持たせて、この母親を三日でも養う気になって貰いたいってネ、――六十八になる新造なんてのはないよ、罰の当った野郎だ」 捕物の名人銭形平次と子分の八五郎、初夏の薫風を満喫しながら、明けっ放した六畳でこんな無駄を応酬しておりました。 「やりきれねえな、――お袋の話はしばらく預かって――」 「ガラッ八ほどの者でも気がさすだろう」 「ね、親分、意見はまた改めて聴くとして、今日はその幽霊の話をさしておくんなさいよ」 「いやに執念が深いじゃないか」 「橋場の恵大寺の墓場に、チョクチョク出るって話をお聞きですかい」 ガラッ八の八五郎は、両手を胸にダラリと泳がせて、怪談噺の
野村胡堂
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