野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、子さらいが流行るんだってネ」 「聞いたよ、憎いじゃないか」 銭形平次は苦い顔をしました。 「赤ん坊ならどこへ連れて行かれても、それっきり判らなくなるかも知れないが、さらわれるのは大概七つ八つから十二三の子だからどんな場所に売られたにしても、土地の役人なり御用聞なりに、名乗って出られそうなものじゃありませんか。江戸だけでも何人あるか知れないが、一人も行方が判らないとは変だねえ、親分」 ガラッ八の八五郎も、時々はこういった上等の智恵を出すこともあったのです。 「だから俺は考えているのさ、相手の見当だけでも付かなきゃア、うっかり手は出せねえ、――だがな八、金や品物を盗られたのなら、働いて取返す術もあるだろうが、子供をさらわれた親の身になってみれば、諦めようがあるまい。悪事の数も多いが、信夫の藤太の昔から、人の子を取るほど罪の深いものはないなア」 銭形平次も妙に感傷的でした。女房のお静が身重で、暮までには、平次も人の親になるはずだったからでしょう。 「女の子だけをさらうなら解っているが、時々男の子を誘拐す料簡が解らないじゃありませんか」 八五郎はまだ首を捻っております。 ちょうどその時
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