野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、笑っちゃいけませんよ」 「何だ、八」 「親分もあっしも同じ人間でしょう」 ガラッ八の八五郎はまた変なことを言い出しました。 「その通りだ、眼が二つ、口が一つ、なるほど、こいつは不思議だ。今まで気が付かなかったが、手前の言う通りお互にあんまり変っちゃいないね、八」 銭形平次もこの調子です。 「まぜっ返しちゃいけません。――ね、親分、その同じ人間のあっしが、どう修業しても、親分のような良い御用聞になれないのは、どういうわけでしょう」 ガラッ八はつくづくそう言うのでした。歳は幾つも違わないはずですか、人間の貫禄はあまりに違いすぎます。 「そう言うなよ、八、手前の方がよっぽど人間が出来ているのかも解らないじゃないか、神様や仏様から見れば」 「神様や仏様は勿体ねえ、せめて八丁堀の旦那衆が見て、良い御用聞だとなるには、何か秘伝のようなものがありゃしませんか」 「口伝も極意もないのがこの道さ」 「それとも、摩利支天様へ願をかけるとか何とか」 「角力取じゃあるまいし」 「でも、何かありゃしませんか、親分、あっしはどうせ大した人間じゃねえがお上の御用を聞いてる以上は、一生にたった一度でいいから、
野村胡堂
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