野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
相模屋の若旦那新助は二十一、古い形容ですが、日本橋業平といわれる好い男のくせに、去年あたりからすっかり、大弓に凝ってしまって、大久保の寮に泊り込みのまま、庭ので一日暮すことの方が多くなりました。 主人の喜兵衛はそればかり心配して、親類や知己に頼んで、縁談の雨を降らせましたが、新助はそれに耳を傾けようともしません。 大久保の寮の留守番には、店中の道楽者茂七を置いて、出来ることなら、若旦那新助の趣味を、歌舞伎芝居なり、江戸小唄なりに振り向け、間がよくば、遊びの一つも覚えさせようとしましたが、それが大当て違いで、道楽者の茂七までが、木乃伊取りが木乃伊になって、大弓に凝り始めたという情報が、大久保にやっている下男の権治の口から店の方へ伝えられました。 相手とも師範ともなるのは、同じ大久保のツイ近所に住んでいる浪人者佐々村佐次郎、これは二十六七、男が好く、器用で、字もよく書き、弓もよく引き、法螺もよく吹く、一向身は持てないが、その代り遊び友達にはこの上もなく調法な男でした。 その日も昼頃から始まって、申刻(四時)前にはかなり草臥れましたが、近頃油の乗って来た新助は、なかなか止そうということを言い
野村胡堂
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