野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「あ、八じゃねえか。朝から手前を捜していたぜ」 路地の跫音を聞くと、銭形平次は、家の中からこう声をかけました。 「ヘエ、八五郎には違えねえが、どうしてあっしと解ったんで?」 仮住居の門口に立ったガラッ八の八五郎は、あわてて弥蔵を抜くと、胡散な鼻のあたりを、ブルンと撫で廻すのでした。 「橋がかりは長えやな、バッタリバッタリ呂律の廻らねえような足取りで歩くのは、江戸中捜したって、八五郎の外にはねえ」 平次は春の陽溜りにとぐろを巻きながら、相変らず気楽なことを言っているのです。 「へッ、呆れたものだ」 「俺の方でも呆れているよ。その跫音の聞えるのを、小半日待っていたんだ」 「用事てえのは、何ですかい、親分」 「それが少し変っているんだ。手前、昨日瓢箪供養に行ったっけな」 「行ってみましたよ、筆供養や針供養はチョクチョクあるが、瓢箪供養てえのは江戸開府以来だ、あれを見ておかねえと、話の種にならねえ」 「どんな事をやったんだ、一と通り話してくれ、――少し変なことがあるんだが、瓢箪供養の因縁が解らなきゃ、見当がつかねえ」 平次は煙管を伸して、腹這いになったまま一服つけました。 紫の烟が、春の光の中
野村胡堂
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