野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、面白い話があるんだが――」 八五郎のガラッ八が、長い顎を撫でながら入って来たのは、正月の十二日。屠蘇機嫌から醒めて、商人も御用聞も、仕事に対する熱心を取り戻した頃でした。 「しばらく顔を見せなかったじゃないか。どこを漁って歩いてたんだ」 銭形の平次は縁側から応えました。湯のような南陽にひたりながら、どこかの飼い鶯らしい囀りを聴いていたのです。 凝としていると、梅の香が流れて、遠くの方から、時々ポン、ポンと忘れたような鼓の音が聴えて来るといった昼下がりの風情は、平次の神経をすっかり和めていたのでしょう。 「親分、憚りながら、今日は申し分のない御用始めだ。野良犬が掃き溜めを漁るように言って貰いたくねえ」 「大層なことを言うぜ。どこでお屠蘇の残りにありついたんだ」 平次はまだ茶かし加減でした。こう紫に棚引く煙草の烟を眺めて、考えごとをするでもなく、春の光にひたりきっている姿は、江戸開府以来の捕物の名人というよりは、暮しの苦労も知らずに、雑俳の一つも捻っている、若隠居という穏やかな姿でした。 「親分、神楽坂の浪人者殺し、あの話をまだ聴かずにいるんですか」 「聴いたよ、――が、二本差と鉄
野村胡堂
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