野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、良い陽氣ぢやありませんか。少し出かけて見ちやどうです」 ガラツ八の八五郎が木戸の外から風の惡い古金買ひのやうな恰好で、斯う覗いてゐるのでした。 「何んだ八か。そんなところから顎なんか突き出さずに、表から廻つて入つて來い」 錢形平次は、來客と對談中の身體を捻つて、大きく手招ぎました。 「顎――ですかね、へツ、へツ」 ガラツ八は首を引込めて、不平らしく長んがい顎をブルンと撫で廻します。 「木戸の上へ載つかつたのは、まさか鼻の頭ぢやあるめえ。體裁振らずに、さつさと大玄關から入つて來るが宜い」 「大玄關と來たぜ、へツ、へツ、親分も宜い氣のものだ。敷臺に隣の赤犬が寢そべつて居るんだが蹴飛ばしても喰ひ付きやしませんか」 「丁寧に挨拶をして通るんだよ。犬だつて見境があらア、平常亂暴なことをするから、お前の顏を見ると唸るぢやないか。――あの通りだよ、三つ股の兄哥。目白までつれて行つたところで、大した役には立つまい」 平次は客を見て苦笑するのです。 客といふのは、目白臺で睨みを利かして居る顏の古い御用聞で、三つ股の源吉といふ中年者ですが手に餘るほどの大事件を背負ひ込んで、町方役人から散々に油を絞
野村胡堂
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