野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「八、久しく顏を見せなかつたな」 錢形の平次は縁側一パイの三文盆栽を片付けて、子分の八五郎の爲に座を作つてやり乍ら、煙草盆を引寄せて、甲斐性のない粉煙草をせゝるのでした。 「へエ、相濟みません。ツイ忙しかつたんで――」 「金儲けか、女出入か」 「からかつちやいけません」 「まさかあの案山子に魔が差したやうなのに凝つてゐるんぢやもるまいな」 「何んです、その案山子に魔がさしたてエのは」 「白ばつくれちやいけない、踊だよ。水本賀奈女とかいふのが、大變な評判ぢやないか。お前の伯母さんの近所に住み着いて、二年ばかりの間に町内の若い男をすつかり氣狂ひにしてしまつたといふ評判だぜ」 「へツ」 「變な聲だな、すつかり言ひ當てられたらう。――惡い事は言はないから、あれだけは止す方が宜いぜ。縮緬の手拭なんか持つて歩くと、野郎は段々縁遠くなるばかりだ」 「それですよ、親分」 「何がそれなんだ。眼の色を變へて膝なんか乘出しやがつて」 「その水本賀奈女師匠が、思案に餘つて錢形の親分さんにお願ひして、ちよつと伴れて來てくれと――」 ガラツ八の八五郎は、急に居住ひを直して、突き詰めた顏になるのです。 「御免蒙るよ
野村胡堂
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