野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、ちと出かけちやどうです。花は盛りだし、天氣はよし」 「その上、金がありや申分はないがね」 誘ひに來たガラツ八の八五郎をからかひ乍ら相變らず植木の新芽をいつくしむ錢形の平次だつたのです。 「實はね、親分。巣鴨の大百姓で、高利の金まで貸し、萬兩分限と言はれた井筒屋重兵衞が十日前に死んだんだが、葬ひ萬端濟んだ後で、その死に樣が怪しいから、再度のお調べが願ひ度いと、執拗く投げ文のあるのを御存じですかい」 八五郎は妙な方へ話を持つて行きました。 「知つてるよ、それで巣鴨へ花見に行かうといふんだらう。向島か飛島山なら花見も洒落てゐるが、巣鴨の田圃で蓮華草を摘むなんざ、こちとらの柄にないぜ、八」 「交ぜつ返しちやいけません。花見は追つて懷ろ加減のいゝ時として、兎も角巣鴨へ行つて見ようぢやありませんか。井筒屋重兵衞の死にやうが、あんまり變つてゐるから、こいつは唯事ぢやありませんよ、親分」 「大丈夫か、八。此間も大久保まで一日がかりで行つて、狐憑きに馬鹿にされて歸つたぢやないか」 鼻の良い八五郎は、江戸中の噂の種の中から、いろ/\の事件を嗅ぎ出して來ては、錢形平次の活動の舞臺を作つてくれるのでし
野村胡堂
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