野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、變なことがあるんだが――」 ガラツ八の八五郎は、大きな鼻の穴をひろげて、日本一のキナ臭い顏を親分の前へ持つて來たのでした。 「横町の瞽女が嫁に行く話なら知つてるぜ。相手は知らないが、八五郎でないことは確かだ。今更文句を言つたつて手遲れだよ八。諦めるが宜い」 錢形平次は無精髯を拔き乍ら、ケロリとして斯んなことを言ふのです。お盆過ぎのある日、御用がすつかり暇になつて、凉みに行くほどのお小遣ひもない退屈な晝下がりでした。 「冗談ぢやありませんよ。横町の瞽女はあゝ見えても金持だ。こちとらには鼻も引つかけちやくれませんよ、へツへツ」 「嫌な笑ひやうだな。さては一と口申込んで小氣味よく彈かれたらう」 「へツ、彈ねたのは此方で」 「うまく言ふぜ」 「ところで親分變な話の續きだが――」 「さう/\變な話を持つて來たんだね。瞽女の嫁入りの話でないとすると、叔母さんがお小遣ひでもくれたといふのか」 「交ぜつ返しちやいけません。此の手紙ですよ、親分」 八五郎は懷中から一通の手紙を出すと、疊の上を滑らせるやうに、平次の前へ押しやりました。 「何? 手紙」 「達筆で書いてあるから、よくは讀めねえが、大凡
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