野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「變な噂がありますよ、親分」 子分の八五郎がまた何にか嗅ぎつけて來た樣子です。 「何んだ、また五本足の猫の子の見世物ぢやあるまいな」 錢形平次は相變らず白日の夢を追ふやうに、縁側に流れて行く、煙草の煙の末を眺めて居るのでした。 江戸の四月、神田の家並も若葉に綴られて、何處からともなく飼鶯の聲が聞えます。 「そんな間拔けな見世物ぢやありませんよ――今度のはお化けで」 「止せやい、馬鹿々々しい。お化けと鎌いたちは箱根から東には居ないことになつてゐるんだ」 平次は煙草の煙を拂ひでもするやうに、大きく手を振りました。 「ところが、現に見た者が三人も五人もあるんだから面白いでせう」 「あわてた奴が居るんだね」 「色模樣の大若衆なんださうで。薄色の振袖に精巧の袴をはいて、長いのをかう抱くやうに暗がりからスツと出て、スツと消える――」 「身振りなんかしたつて、お前ぢや色若衆には見えないよ。そんなのは大方芝居の色子のヒネたのか、蔭間の大年増が道に迷つたんだらう」 平次はまるで相手にしません。 「その化物が堀を越したり生垣をくゞつたり、若くて綺麗な娘のある家ばかりねらつて歩くとしたらどんなもので」 ガラ
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