野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
順風耳の八五郎は、相變らず毎日一つくらゐづつは、江戸中から新聞種を掻き集めて來るのでした。 その中には隨分愚にもつかぬものがあり、十中八九は聞流しにしてしまひますが、中には無精者の錢形平次を驅り立てて、恐ろしい事件の渦中に飛び込ませることも少くはなかつたのです。 「聽いたでせうね、親分。あの話を」 格子を足で開けると、彌造を二つ拵へたまゝ火鉢の向うに坐つて、こんな突飛なことを言ふ八五郎でした。 「聽いたとも、お前が横町の荒物屋のお光坊を口説いたつて話なら、町内で知らない者はないぜ」 錢形平次は相變らずの調子です。 「へツ、笑はかしちやいけませんよ、口説いたのはお光坊の方で」 「宜い氣なものだ」 「あつしの方から御免を蒙りましたよ。あんな綺麗な女を女房に持つちや、亭主が氣が揉めて仕樣がないだらうと――」 「お前は長生するよ」 「それにお光坊は少し浮氣つぽくて、附き合ひ切れませんよ」 「へエ、あの娘がねエ」 「この間まで佐久間町の丸屋の若主人と何んとか言はれて居ましたが、近頃は柳原の轟の三次と人目につかないところばかし選つて會ひ度がつて居るやうで」 「大層探索が屆くんだね、それが今日持つて
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