野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、お早やうございます。今日も暑くなりさうですね」 御馴染の八五郎、神妙に格子を開けて、見透しの六疊に所在なさの煙草にしてゐる錢形平次に聲を掛けました。 「大層丁寧な口をきくぢやないか。さう改まつて物を申されると、借金取りが來たやうで氣味がよくねえ。矢つ張り八五郎は格子を蹴飛ばして大變をけし込むか、庭木戸の上へ長んがい顎を載つけなくちや、恰好が付かないね」 平次も充分相手が欲しさうでした。お盆が過ぎると、御用の方もすつかり暇で、八五郎が毎日持つて來てくれる情報も、巾着切や掻ツ拂ひがお職では、平次が出動する張合もなかつたのです。 「今日はお使者ですよ。大玄關から入らなくちや恰好がつかないでせう」 「成程御上使樣のお入りと來たか、そいつは氣が付かなかつた、――待ちなよ、胡坐をほぐして、肌くらゐは入れなくちや、そこで――御上使樣には先アづと來るか、鳴物が欲しいなア、八」 錢形平次と八五郎は、何時でもかう言つた調子で話を進めるのでした。それはひどくビジネス・ライクではありませんが、洒落の潤滑油が入ると、掛合のテムポが早くなつて、案外要領よく運ぶのです。 「それ程でもねえが、頼んだ相手が惡い
野村胡堂
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