野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、良い新造が來たでせう。かう小股のきれ上がつた、色白で、ポチヤポチヤした」 「馬鹿野郎」 錢形平次は思はず一喝を食はせました。上がり框から這ひ込むやうに、まだ朝の膳も片付かない茶の間を覗きながら八五郎は途方もないことを訊くのです。 「でも、あんな可愛らしいのはちよいと神田中にもありませんよ、あつしが知らないくらゐだから。餘つ程遠くから來たに違げえねえと思ふんだが――」 「呆れた野郎だ。いきなり人の家へ飛び込んで來やがつて、お早うとも言はずに――尤も凄いか可愛いか知らないが、女が一人來るのは來たがね」 「それで路地を飛び出した樣子が、ひどくあわててゐたから、親分のところへ來て、うんと脅かされたこととは思つたが――」 「待つてくれ。脅かしもどうもしないよ、姫糊を三文ほど買つただけなんだが――ありやお前、七八年前に還暦が過ぎた筈だぜ」 「誰です、それは」 「この邊をちよい/\歩く糊賣の婆アだよ」 「嫌になるなア、あつしの言ふのは、十八九の、ポチヤポチヤした」 「わかつたよ、色白で小股のきれ上がつた――といふんだらう」 親分、子分の話は、何處まで行つても果てしがありません。 「その人なら
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