野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、ありゃ何んです」 観音様にお詣りした帰り、雷門へ出ると、人混みの中に大変な騒ぎが始まって居りました。眼の早い八五郎は、早くもそれを見付けて、尻を端折りかけるのです。 「待ちなよ、八、喧嘩か泥棒か喰い逃げか、それとも敵討ちか、見当もつかねえうちに飛込んじゃ、恥を掻くぜ」 平次は若駒のようにはやり切った八五郎を押えて、兎にも角にも群衆をかきわけました。 「はいよ、御免よ」 などと、八五郎は声を張りますが、場所が場所なり日和もよし、物好きでハチ切れそうになって居る江戸の野次馬は、事件を十重二十重に囲んで、八五郎の蛮声でも道を開いてはくれません。 その間に誰が気が付いたものか、 「銭形の親分だよ、道を開けなきゃ――」 などと言うものがあり、やがて道は真二つに割れます。 群衆の中に、居疎んだのは二人の若い男女、男の方は三十前後の町人風で、女の方は十八、九の旅姿の娘、これは非凡の美しさですが、何処か怪我をした様子で、身動きもならず崩折れましたが、それを介抱している男の方も、額口を割られて、潮時のせいか、鮮血が顔半分を染めて居ります。 「どうしたんだえ、これは?」 平次は、兄妹とも夫婦とも見
野村胡堂
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