野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「親分、先刻から路地の中を、往つたり來たり、お百度を踏んでゐる女がありますが、ありや何でせう」 八五郎は自分の肩越しに、煙管の吸口で格子の外を指すのです。 「わけがあり相だな、お前に跟いて來た女馬ぢや無かつたのか、拂ふものは拂つて、早く歸した方が宜いぜ」 毎度のことで、錢形平次は驚く色もありません。 「冗談でせう、あつしは叔母の家から眞つ直ぐに來たばかりで、女馬も雌猫もついて來る筈はありませんよ」 「はてな、それぢやワケがありさうだ、騷ぐと逃出すにきまつてゐるから、お前はそつとお勝手へ行つて、お靜にさう言つて、誘ひ入れて見るが宜い」 「成程、女は女同士だ」 「良い男の八五郎が、うつかり顎を出すと、大概の女は膽をつぶす」 そんな事を言つて居るのを、狹い家のお勝手で聽いたお靜は、そつと裏口から拔け出して、襷を外して前掛を疊んで、小買物でもするやうな恰好で路地へ出ると、どう聲を掛けたものか、間もなく女二人、肩を並べて入つて來ました。 お靜が手を取るやうにして、家の中へ入れた女といふのは、三十五六の大年増で、大家の奉公人らしく、身扮は木綿物の至つて質素なもの、手足もひどく荒れて居りますが、顏容
野村胡堂
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