野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
二月のある日、歩いてゐると斯う、額口の汗ばむやうな晝下がり、巣鴨からの野暮用の歸り、白山あたりへ辿りついた頃は、連の八五郎はもう、何んとなく御機嫌が斜めになつて居りました。 「大層元氣が無いやうだな、八」 平次は足を淀ませて、八五郎の長い顎を振り返りました。 「さういふわけぢやありませんがね、何處かで一と休みして、一服やらかさうぢやありませんか」 「煙草なら、歩き乍らでも呑めるぢやないか」 「風に吹かれ乍ら呑んだ煙草は身につきませんよ、それに掌の中で灰殼を轉がす藝當は、どうもあつしの柄にないやうで」 「氣取つたことを言やがる、それより、腹が減つたら減つたと正直に白状するが宜い、先刻から、野良犬を睨み据ゑたり、團子屋の看板を眺めたり、蕎麥屋の前でクン/\鼻を鳴らしたり、お前の樣子は尋常ぢやないぜ」 「大丈夫ですよ、野良犬なんかへ噛み付きやしませんから」 「實はな、八、少し目當てがあるんだよ、白山の白梅屋敷といふのを、お前聽いたことがあるだらう」 「知つてますよ、大地主の金兵衞の庭で、何百年とも知れぬ、梅の老木で名を知られた屋敷ですよ、龜戸には、梅屋敷や臥龍梅といふ名所もあるが、白山の白梅
野村胡堂
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