野村胡堂
野村胡堂 · 日本語
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野村胡堂 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
「世の中には變つた野郎があるものですね、親分」 ガラツ八の八五郎は、又何やら變つた噂を持つて來た樣子です。 「大抵の人間は、自分は世間並より變つた人間だと思つて居るよ」 錢形平次は、相變らず、はなつから茶化してかゝります。 結構な冬日向、何が無くとも豆ねぢに出がらしの番茶、お靜は目立たぬやう、そつと滑らせてお勝手に引下がると、晝下がりの陽を膝に這はせて、八五郎の話は面白く彈むのです。 「深川入船町の鍵屋源兵衞――親分も御存じでせうね」 「大層な身上だつてね、生憎親類でも何んでも無いが、明暦の大火でうんと儲けて、江戸一番の材木屋になり、その上苗字帶刀を許されて、日光山の御用も勤めると聽いたが」 錢形平次もそれはよく知つて居ります。後の世の奈良茂、紀文と共に、百萬兩の富を積んだといふ、江戸暴富傳中の一人です。 「その伜が噂の種で、深川中で知らないものはありやしません――廣い江戸にも、あんな息子は二人とはあるまいと――」 「親孝行でもするのか」 「飛んでもない、金持の子に孝行息子なんかあるものですか、何しろ甘やかし放題に育てたのが、年頃になつて遊びを覺えたからたまりませんよ、辰巳藝者を總嘗め
野村胡堂
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