萩原朔太郎 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
空と地とに緑はうまる、 緑をふみてわが行くところ、 靴は光る魚ともなり、 よろこび樹蔭におよぎ、 手に輕き薄刃はさげられたり。 ああ、するどき薄刃をさげ、 左手をもつて敵手に揖す、 はや東雲あくる楢の林に、 小鳥うたうたひ、 きよらにわれの血はながれ、 ましろき朝餉をうみなむとす。 みよ我がてぶくろのうへにしも、 愛のくちづけあざやかなれども、 いまはやみどりはみどりを生み、 わがたましひは芽ばえ光をかんず、 すでに伸長し、 つるぎをぬきておごりたかぶるのわれ、 をさな兒の怒り昇天し、 烈しくして空氣をやぶらんとす、 土地より生るる敵手のまへ、 わが肉の歡喜ふるへ、 感傷のひとみ、あざやかに空にひらかる。 ああ、いまするどく鋭刃を合せ、 手はしろがねとなり、 われの額きずつき、 劍術は青らみつひにらじうむとなる。 ●図書カード
萩原朔太郎
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