江戸川乱歩 · 日本語
冒頭段落プレビュー
原文 (日本語)
東京都内に、『まぼろしの豹』があらわれるという、うわさがひろがっていました。 ある月の美しい晩、ひとりの中学生が、お友だちのうちからの帰り道に、大きな西洋館の前にさしかかりました。 さびしい町ですから、まだ九時ごろなのに、まったく人通りがありません。空には、満月にちかい月が、こうこうとかがやいています。ひくいコンクリートの塀をへだてて、西洋館の屋根が、月の光をうけて、まっ白に光っているのが見えます。 その屋根の上を、一ぴきの大きなネコが、のそのそと歩いていました。 「オヤッ、なんて、でっかいネコだろう。」 中学生はびっくりして、立ちどまりました。 そいつは屋根の上を、だんだん、こちらへ歩いてきます。ふつうのネコの十倍もあるほど大きいのです。そしてふしぎなことには、全身が金でできているように、ピカピカ光っているのです。その金色のからだに、黒い斑紋が、いっぱいならんでいます。 「アッ、ネコじゃない。豹だッ!」 中学生は、からだがしびれたようになって、逃げだすこともできなくなってしまいました。 それにしても、なんという美しさでしょう。金色の豹は月の光をうけて、キラキラと、後光がさしているよう

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