Vol. 2May 2026

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소조 — 이부세 사부로에 대하여

小照

太宰治

いつも自分のところへ遊びに來てゐる人が、自分の知らぬまに、自分を批評してゐるやうな小論文を書いてゐるのを、偶然に雜誌あるひは新聞で見つけた時には、實に、案外な氣がするものである。その論の、當、不當にかかはらず、なんだか水臭い、裏切りに似たものをさへ感ずるのは、私だけであらうか。こんど改造社から、井伏さんの作品集が出版せられるさうだが、それに就いて何か書け、と

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小熊秀雄全集-01 短歌集

小熊秀雄

けだものの子 産科院よるのさびしさ夕食の鈴のしづかに鳴りにけるかな おぎや……たかくさびしく産科院けだものの子のうまれけるかな けだものの子はかたくもろ手を胸にくみしつかりなにかにぎり居るかも うすら毛のけだものの子は四つ足をふんばりにつつ呼吸づきにけり けだものの子は昼としなればひそまりて小鼻かすかにうごめけるかも おそるおそるけだものの子の心

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小熊秀雄全集-02 詩集(1)初期詩篇

小熊秀雄

地軸に近い何所かで うづもれた 世にも稀なる紫ダイヤを とげ/\と骨ばかりのやせこけた 悪魔たちがまるくとりまき ひからびた手を繋ぎ合ひ にやにやとした もの倦い足どりで 踊るたびにからからと音がする ◇ ちやうどそれのやうに ちやうどそれのやうに かつて失はれた俺の魂は かつてうばはれた俺の魂は 柔かく 滑らかな琥珀の頬と 熟したザクロの唇とをもつた 美し

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小熊秀雄全集-04 詩集(3)小熊秀雄詩集1

小熊秀雄

たぐひなく美しい幻に満ちた東洋の国日本の過去は、私の祖国として愛着措かないものである。 そして同時に美くしかるべき私の国に、私といふ悪魔の相貌をもつた子が生れたといふことに就いて、私は何者かに充分責められていゝ。 今茲に私の異態の知れない思想を一冊の詩集にまとめて世におくるといふことは、喜んで良いことであらうか、悲しんで良いことであらうか、私自身わからない。

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小熊秀雄全集-05 詩集(4)小熊秀雄詩集2

小熊秀雄

茫漠たるもの 茫漠たる不安のために 私は必死となる 野であり、山であり、村落であり、海であり、 都会であり、村であり、空中であり、 地下道である。 すべての上に住み、 すべての中に住む、 そして何処にも不安がある、 そしてその不安を私の力で埋めようとする、 私はそれが出来るか、 私は知らない、 簡単明瞭な私の答へよ、万歳、 いま私は仕事の最中 突然衝動的に一

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小熊秀雄全集-06 詩集(5)飛ぶ橇

小熊秀雄

●目次 序|綱渡りの現実|移民通信|プラムパゴ中隊|空の脱走者|死界から| 百姓雑兵|飛ぶ橇――アイヌ民族の為めに 僕が詩の仕事の上で、抒情詩の製作に許り、執着してゐないで、長い形式の叙事詩をも手掛け今後もそれを続けてゆかうとする気持には、色々の理由があります。 その一つの理由に挙げられることは叙事詩は、短かい詩とはまたちがつた持味があつて、将来大衆の

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小熊秀雄全集-07 詩集(6)長篇詩集

小熊秀雄

詩集(6)長篇詩集 小熊秀雄 [表記について] ●ルビは「(ルビ)」の形式で処理した。 ●二倍の踊り字(くの字形の繰り返し記号)は「/\」「/゛\」で代用した。 ●JIS外字は「※」で代用し、末尾にグラフィックを置いて字形を示した。 ●は、入力者注を示す。 ●目次 紙幣 シャリアピン 長長秋夜 魔女 きのふは嵐けふは晴天(抒情詩劇) 託児所をつくれ 諷刺大学

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小熊秀雄全集-08 詩集(7)恋愛詩篇

小熊秀雄

詩集(7)恋愛詩篇 小熊秀雄 [表記について] ●ルビは「(ルビ)」の形式で処理した。 ●は、入力者注を示す。 ●目次 最初の微笑と最初の手|谷の上|美しい血を何処に流さう|愛と閑暇|愛の一刀両断|女の強さを愛してゐる|愛は潜水艇のやうに|秋の詩|労働の中の愛|愛の出稼人|あなたの寂寥に答へて|林の中で|夕星の歌|両性の上の貪慾者|愛に休息があるか ――或る

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小熊秀雄全集-09 詩集(8)流民詩集1

小熊秀雄

二十年も、そのもつと前に、自分は詩を書き初めたとき、こんな念願をたてたものであつた、それは一生の間に自分の身長だけの高さの、詩集の冊数をもちたいものだといふことであつた。またその頃は、若く生命の燃焼ともいふべきものが旺盛であつたから、眼にふれるもの、心にふれるもの、みんな詩になりさうで、身長位の高さに詩集がもてさうな気もしたのである。 ところで現在その慾望は

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小熊秀雄全集-10 詩集(9)流民詩集2

小熊秀雄

月は地上を見てゐる 月よ悪い犬奴 お前は光りで咆えよ 地上の喰べ物を欲しがつてゐる でもお前には地上の愛は喰はせない 水蜜桃の汁は おれたちが吸ふのだ 月よ お前は地上の一切の出来事を なにもかにも 光りのセロファン紙で 包まうとする 貧乏も、失恋も、饑餓も たたかひも すべてを美化しようとする お前はだまつて 人間のすることを見てゐたらいゝ 勝負なしの土

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小熊秀雄全集-11 詩集(10)風物詩篇

小熊秀雄

東京駅 東京駅は ウハバミの 燃える舌で 市民の 生活を呑吐する 玄関口、 朝は遅刻を怖れて 階段を一足とび 夕は 疲れて生気なく 沈黙の省電に乗る 所詮、悪蛇の毒気に触れて 人々の 痲痺は 不感症なり。 隅田河 隅田河 河上より水は 河下に流るゝなり 天の摂理に従へば 古き水は 新しき水に 押しながされて 海に入るなり 一銭蒸気五銭となり つひに争議も起る

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小熊秀雄全集-12 詩集(11)文壇諷刺詩篇

小熊秀雄

詩集(11)文壇諷刺詩篇 小熊秀雄 [表記について] ●ルビは「(ルビ)」の形式で処理した。 ●二倍の踊り字(くの字形の繰り返し記号)は「/\」「/゛\」で代用した。 ●は、入力者注を示す。 ●目次 序|志賀直哉へ|佐藤春夫へ|島崎藤村へ|室生犀星へ|正宗白鳥へ|林芙美子へ|横光利一へ|谷崎潤一郎へ|新居格へ|徳永直へ|林房雄へ|武田麟太郎へ|秋田雨雀へ|窪

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小熊秀雄全集-13 詩集(12)その他の詩篇

小熊秀雄

●目次 ◆未収録詩篇(1936~1940) 性別の谷 一つの太陽と二つの現実 パドマ 雪の伝説を探るには 右手と左手 或る旦那の生活 寓話的な詩二篇 温和しい強盗 猿と臭い栗 国民の臍を代表して さあ・練習始め 芝居は順序よくいつてゐる 日比谷附近 多少の埃は 平民と愛 愛と衝動と叡智 文学の大根役者に与ふ 転落 インテリの硬直 喜怒哀楽の歌 怖ろしい言葉を

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小熊秀雄全集-20 大波小波

小熊秀雄

大波小波 小熊秀雄 独立美術分裂説 次は誰が脱退するか ▼独立の林重義も遂にシビレを切らして脱退した。当然の現象である。今年の独立美術展に就ては、一般観賞者はいよ/\この団体のマンネリズムに失望した。出品画家もそれを認めてゐた筈だ、たゞこの団体の一部の会員は『さう飛躍的に進歩ができる筈がない、幾分ではあるが前回より、素質が向上してゐる――』といふ、この言葉位

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小熊秀雄全集-22 火星探険―漫画台本

小熊秀雄

[目次] 星野博士 火星への通信 火星の運河 火星に人間が住んでゐるか 空中飛行 火星の首都ミルチス・マヂョル市 大歓迎会 腹痛 トマト騒動 火星の看護婦さん 地球に向つて テン太郎の報告 人間のヒゲと猫のヒゲ コオロギと蛙 星野博士 ○ テン太郎や お昼のおべんとうを 天文台のお父さんに とどけておくれ ハイ 行つてきます ○ ニヤン子とピチクン 僕につい

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小熊秀雄と藤原運

槙村浩

サガレン。絶北の植民地。―――こゝに小熊秀雄かつて行商の鍬と共に放浪し数年後藤原運またショベルを携えて徘徊した 小熊秀雄は自然を最もよく背后の凹影に見た藤原運は自然を最もよく前面の凸影に見た 小熊秀雄は社会を痴呆せる自然の背后におしかくした藤原運は社会を麻痺せる自然の前面におしすゝめた 小熊秀雄は生来の饒舌でしゃべりにしゃべりまくった藤原運は労働者の簡素さで

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小爆発二件

寺田寅彦

小爆発二件 寺田寅彦 昭和十年八月四日の朝、信州軽井沢千が滝グリーンホテルの三階の食堂で朝食を食って、それからあの見晴らしのいい露台に出てゆっくり休息するつもりで煙草に点火したとたんに、なんだかけたたましい爆音が聞こえた。「ドカン、ドカドカ、ドカーン」といったような不規則なリズムを刻んだ爆音がわずか二三秒間に完了して、そのあとに「ゴー」とちょうど雷鳴の反響の

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小犬

鈴木三重吉

小犬 鈴木三重吉 一 村のとほりにそうた、青い窓とびらのついた小さな家に、気どりやの、そのくせ、お金にかけては、をかしなほどこまかな、おばあさんが、女中と二人で、ひつそりとくらしてゐました。 二人は、家のまへの小さな庭へ、いろんな野菜ものなぞをつくつてゐました。 ところが或晩、だれかゞその畠へはいりこんで、玉ねぎを十ばかりぬすんでいきました。女中のローズが、

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小犬と太郎さん

槙村浩

或所に太郎といふ子供がありました。太郎は大へん犬ずきでした。或日太郎はお母さんに二十銭お小づかいをいたゞきました。太郎は「何を買はうかなあ」といひ乍ら町を歩いて居ました。太郎はあちこち歩いて居ますと、二匹の小犬が今にも殺されさうに成ってゐました。太郎は情深い人でしたから「モシ/\その犬はどうしたのですか」「アヽ此の犬かね、此奴家へ入って来て私達が食事してるそ

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小さな王国

谷崎潤一郎

貝島昌吉がG県のM市の小学校へ転任したのは、今から二年ばかり前、ちょうど彼が三十六歳の時である。彼は純粋の江戸っ児で、生れは浅草の聖天町であるが、舊幕時代の漢学者であった父の遺伝を受けたものか、幼い頃から学問が好きであった為めに、とう/\一生を過ってしまった。―――と、今ではそう思ってあきらめて居る。実際、なんぼ彼が世渡りの拙い男でも、学問で身を立てようなど

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小生のあけくれ

北大路魯山人

小生のあけくれ 北大路魯山人 山というほどの山ではないが、山中での朝夕起臥三十余年、ほとんど社交のない生活を営みながら、小生は時に快速船のように、何事をも進ませずにはいられないクセを持っている。 自慢ではないが、ソレッというと、すべてに超スピードで活動するために、周辺の助け舟は目のまわるようなテンテコ舞いをさせられるが、小生から見るとすべてが鈍速で見ていられ

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小田原の夏

牧野信一

「暑さ、涼しさの話。」 おや/\、もう夏なのか! 僕は忘れてゐた。――それで、壁の鏡をのぞいて見ると僕の額は玉の汗だ。なるほど僕は薄いシヤツ一枚だ、白いパンツだ。いつ頃僕はこんな身なりに着換へてゐたことか? この机の一輪ざしには桃の花が活けてある。だから僕は、未だ、夏になつてゐるとも思はなかつた、誰が活けたものなのか知らないが、何時にも窓をあけることもなしに

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小ねこはなにを知ったか

小川未明

親たちは、生き物を飼うのは、責任があるから、なるだけ、犬やねこを飼うのは、避けたいと思っていました。けれど、子供たちは、日ごろから、犬でも、ねこでも、なにかひとつ飼ってくださいといっていました。 ちょうど、そのころ、近所でかわいらしいねこの子が産まれたので、それを見てきた男の子は、これを姉さんや、小さい兄さんに話したので、三人は熱心に、お母さんのところへいっ

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小知恵にとらわれた現代の法律学

末弘厳太郎

概念的に美しく組み立てられた法律学がだんだんと世間離れしてゆくことは悲しむべき事実である。そうしてそれは従来の法律学がその対象たる「人間」を深く研究せずして単純にそれを仮定したことに由来するのである。その意味において私は現在の法律学を改造する第一歩として一種のロマンチシズム運動が必要だと考えるのである。この文章は元来「法律学における新浪漫主義」と題して大正一

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